こちらが河野プロの提言となります。
順位戦システムは前回の記事で紹介したので、今回は河野棋士が提言する「棋士はもっと教室やイベントを行うべきだ」という点に焦点を当てていきたいと思います。
前回の記事はこちら
市ヶ谷にある日本棋院本院を例に出しますが、部屋はたくさんあります。
1階は3部屋。
2階は大ホール+1部屋。
3階も3部屋。
5階は和室が4部屋。
6階は3部屋。
平日なら7階もあります。(土日は院生が利用)
こんなにたくさん部屋があるので、土日平日問わずに全てが満室になるのは珍しいことです。
こんなに空き部屋があるのなら、棋士が「とりあえず」教室でも指導碁会でもイベントでも何でもやればいいのにと思います。
なぜ棋士はもっと教室をやらないのか。
それは、日本棋院が棋士と言えども「空き部屋を無料開放していないから」だと思います。
それでは棋士にとっても「とりあえず」教室をやってみようという気にはなれません。
部屋代をいきなり払って、生徒が来るかどうか分からない教室を始めるというのはハードルが高すぎます。
せめて、生徒の人数に応じての利用料などを設定しての歩合制なら始めやすいですよね。
日本棋院からしたら、鍵の開け閉め(特に夜間)や人員配置、お金の管理、希望の棋士に部屋をどう配分するかの調整など、面倒な仕事が増えてしまうことに対して、多少の利用料収入では割に合わないという気持ちも分かります。
その判断が先行して、現在、日本棋院の囲碁教室はどんどん減っています。
しかし、視野を広げると日本棋院に足を運んでもらうというのは、他にもいろんなメリットがあります。
せっかく日本棋院に来たから「指導碁を申し込んでみようかな」とか「売店で買い物しようかな」「今度、こんなイベントあるなら行ってみよう」などと利用料収入以外の収益も生まれます。
やらない理由はいくらでもつけられます。
でも、やる理由を優先的に考えたら棋士は「とりあえず」教室やイベントをやるしかありません。
日本棋院は、棋士に対してある程度の事務作業をお願いする代わりに、空き部屋の開放をすればいいと思います。
昔からそうですが「対局だけで食べていける棋士は上位陣だけ」です。(最近は本当にひどい有様ですが)
なので囲碁普及活動で指導料などをいただいて生活している棋士がほとんどです。(囲碁界では既存の囲碁ファン向けの活動を“お仕事”と呼んでいます)
棋士はこれまで基本的には、お仕事をしたらお給料がもらえる文化で通ってきました。
しかし、現在は日本棋院が棋士全体に十分な仕事を振れるほどの数はありません。
そうなると棋士自身が新規開拓をしていくしかないのです。
もともと棋士は個人事業主ですから、何でも自分でやるしかありません。
とはいえ、対局についてはプロフェッショナルですが、教室の管理や営業などについては何も経験がなければ素人同然です。
だから、これはなかなかしんどいという気持ちは分かります。
囲碁で食べていくためにこのしんどいことに挑戦するのか。
それとも、そんなしんどい思いをするなら囲碁以外で転職するのか。
特に若手棋士は年配棋士よりも待遇が悪いこともあり、切実な局面に来ています。
全てを解決するのは難しいとは思いますが、まずは日本棋院が「とりあえず」空き部屋の開放という、できることから始めたらいいと思います。
永代囲碁塾
こちらが河野プロの提言となります。
河野プロは日本棋院の幕張囲碁研修センターという院生寮の1期生で、私の先輩に当たります。
少し年代は違い、院生も寮も時期は重なっていませんが、時々は寮に来て囲碁を指導してくれたり、一緒に卓球をしたような思い出があります。(約25年前の話なのでうろ覚えですが)
幕張囲碁研修センターについても書いてくれているので、こちらもどうぞ。
河野プロから、囲碁界を変えるためにはどうしたら良いかという提言がありました。
それは将棋のように「順位戦システムを導入」し、クラスを分けて棋士個人のランキングを分かりやすくするというものです。
期ごとにクラス分けを行い、昇級・降級があり、現時点の実力がはっきりと分かるようになります。
たしかに最近の段位はあまりアテになりません。
最近の棋士採用試験の変更問題でも取り沙汰されていますが、昔は現在の倍以上の採用枠がありました。
(院生師範の裁量で入段が決まったこともあるという噂すらあります)
最近は競争が激しくなっただけでなく、AIの影響で研究が進み、技術も大きく向上しました。
そんな厳しい時代を勝ち抜いた若手は本当に強いのです。
初段〜三段 VS 九段の団体戦をやったらどちらのチームが勝つか…。
そんな状況です。
順位戦システムが導入されると、年配の棋士はさらに苦境に立たされるでしょう。
さらに引退制度などが導入されたら、たまったものではないと思います。
それでも、囲碁棋士という職業を持続可能にするには、これくらいの改革が必要だという点に賛同します。
このように棋士自身がが辛い選択肢を選ぶ覚悟を示せば、スポンサー側も納得してすぐに実現してくれるのではないでしょうか。
さらには対局だけでなく、囲碁普及の面にも触れています。
棋士がもっと教室やイベントを開催すべきとのことです。
それに触れると長くなりそうなので、またの機会にということで。
チラシを見ると、出場棋士の顔写真が35人分掲載されています。
(審判、運営委員、司会のポジションが気になりますが)
豪華ですね〜。
優勝・・・55万円
準優勝・・・25万円
そして、3位以下も賞金が用意されているようです。
総額は不明ですが、200万円ほどでしょうか。
これは頑張りたくなる大会ですね。
大会のライブ配信はこちら↓
主催は「囲碁文化振興議員連盟」。
会長の柳本卓治さんは元国会議員ですが、囲碁好きとして知られてる方です。
私も「囲碁サロンRanca」でインストラクターをしていた際に、何度か対局させていただいたことがあります。
昔から囲碁界を応援してくださっている方で、囲碁界全体で大変お世話になっております。
相談役には他に国会議員の方のお名前も。
国会議員には囲碁好きな方が多く、いつも応援ありがとうございます!
藤沢里菜さんと上野愛咲美さんが出ていないこともあり、やはり本命はタイトルホルダーである上野梨紗さんになるかと思います。
そこにタイトル戦の常連メンバーや若手棋士がどう絡んでいくかというところですね。
どのような展開になるのか、楽しみですね!
チラシに掲載された出場棋士の一覧
大会の概要が書かれた案内部分
小中学生の囲碁大会(全国大会)で最も歴史が長いのが、上記の少年少女囲碁大会です。
「個人戦」は1980年に始まって、これまでに45回の開催を数えます。
(毎年夏休み中に開催されており、今度の8月で第46回となります)
歴代優勝者を見ると、たくさんの棋士を輩出しており、中には井山裕太プロなどのタイトル獲得者も見受けられます。
本大会は囲碁棋士への登竜門となっており、ガチ勢の子ども達にとっては一番の目標となっている伝統的な子ども囲碁大会です。
上記のように、2004年には同じ学校内で3人1チームとする団体戦も開始しました。
アニメ「ヒカルの碁」でも出てきましたが、学校別の団体戦は燃えるものがあります。
個人戦は圧倒的に強い子しか全国大会には出れませんが、団体戦ではそんなこともありません。
どちらかというと、チーム全体の平均値をいかに上げるほうが重要なので、誰にでも全国大会に行くチャンスがあります。
そして、団体戦は囲碁普及的にも大きな意味を持ちます。
個人戦で成績が振るわないと、全ての責任が自分のみに降りかかることから、かなり辛いものがあります。
しかし団体戦なら、勝っても負けても同じ思いを共有できる仲間がいます。
楽しくないはずがありません。
囲碁を続けたいと思う動機にもつながるでしょう。
さらに、チームメンバーが足りない場合は、同級生に囲碁を始めてもらって参加する‥‥という光景も見られて、純粋に囲碁人口増加に貢献します。
ヒカルの碁でも似たような場面がありますよね。
個人的には囲碁普及をしていくためには学校別などは問わず「団体戦が大きなカギ」になっていくと思います。
囲碁普及に多大な期待を寄せている団体戦でしたが、コロナの影響もあり、2020年からは中止となっておりました。(個人戦は2020年のみ中止)
さらにはコロナが落ち着いた時期となっても再開のメドは立たず...。
やはり予算的な影響が大きいのでしょう。
ここにも日本棋院の財政不足が響いています。
子ども関係の予算を削るようでは、ジリ貧になってしまい、将来性が見通せません。
はっきり言って本大会は無理してでもやるべきであり、開催しないのは悪手と感じていました。
そして、やっと朗報が入ってきました。
今年から団体戦が復活したのです。
これは、どう見ても「武宮陽光新理事長」や「関達也常務理事」など、新理事メンバーの活躍の成果です。
本当にグッジョブです。
新メンバーの方向性にはとても共感なので、これからも応援していきたいと思います。
でも、一つだけびっくりしたことがあります。
それは、全国大会の出場選手に交通費などの補助金がなくなったことです。
これは本当に衝撃です。
実は囲碁界では、全国大会に出場する選手(一般大会でも)には、多くの場合で交通費や宿泊費の助成があります。
他の業界でアマがこのような待遇を受けるというのは、珍しいことでしょう。
それでも、囲碁界の良き文化で、誰でも全国大会を目指せる環境にあったというのは普及に大きな貢献をしていたと思います。
それが今回は補助がなし・・・。
たしかに団体戦は1チームで3人もいるので、補助を出すとしたら3倍になるというのは厳しいものがあります。
財政難の日本棋院が団体戦の早期復活ができなかった理由でもあるでしょう。
今回の問題で今後の大会運営、特に資金面で色々と考えなくてはなりません。
・今回の団体戦のように交通費補助なしで全国大会開催
・これまでどおりに交通費補助ありで全国大会開催
もちろん、できるならこれまでどおりに補助があっての開催がいいに決まっています。
しかし、今回のように補助あると無理だけど、補助なしなら開催できるということも増えてくると思います。
これは今後、日本棋院の交渉力が問われていくでしょう。
最善策、次善策ということで頑張ってもらいたいと思います。
交通費補助なしの全国大会は開催場所に近い地域が有利です。
今回の全国大会会場は東京の日本棋院本院ですから、関東地方が有利です。
人口の問題があり、ただでさえ関東地方は強いですが、ますます…。
とはいえ、個人的には不公平感があったとしても、開催できるほうが良いと思います。
長崎県出身なので、地方の辛さはよく分かります。
それでも、中止のままよりは開催したほうがいい。
開催を続けることによって、新たなスポンサーを獲得できて、補助復活も狙いやすくなります。
地方は我慢ばかりとなりますが、それを糧として努力する原動力にもなり得ます。
(実際に囲碁棋士になるための修行は、遠いところから来たほうが覚悟が決まりやすい)
色々と問題は山積みですが、今回の開催は本当によかったと思います。
今後ともこの動きを応援していきたいと思います。
遅くなりましたが、5年ほど前の上記の記事を踏まえて検証していきたいと思います。
まぁ、ここは言わずもがな‥‥。
囲碁人口は永代の体感も含めて、右肩下がりで減少し続けてるのは間違いないです。
ちなみにレジャー白書によると‥‥。
2021年 | 180万人 |
2022年 | 150万人 |
2023年 | 130万人 |
2024年 | 120万人 |
(永代調べ)
こちらは大まかな数字となります。
ちなみにレジャー白書は15歳未満及び80歳以上の男女は調査の対象とはなっていません。
囲碁に関しては15歳以下と80歳以上はドンピシャの世代です。
そこを抜いているということなので、実態は調査の倍くらいはいる気がします。(永代の体感)
とはいえ、人数の問題ではなくて、減少率で見ていくと分かりやすいですね。
まぁ、減り続けています。
囲碁界の本丸である日本棋院はどうか。
囲碁人口の減少に比例して、経営が悪化していくのは当たり前のことです。
決算を見ていると寄附金やスポンサー(運営費)収入、会員など軒並み減少しております。
ここ数年の決算収支(特にコロナ後)では1億円前後の赤字が続いている印象があります。
ただ、海外の資産を売却した利益で相殺している年度もあり、キャッシュの減少を避けたときもあります。
表向きは平静を保っているように見えますが、実態は資産が毎年1億円ずつ減っているわけですから、かなりまずいです。(最近は1億の赤字額を楽に超えていきそう‥‥)
貸借対照表を見ているかぎりは、あと数年でキャッシュも底をつき、借金をするか、さらに持っている資産を売却するよりなくなります。
ジリ貧ですね‥‥。
早急な改革が待たれます。
とはいえ、早急に収入がアップする策は見当たりませんので、経費削減という方向性に走るのでしょう。
棋士採用試験の人数減という変更もその一環です。
ここ数年ではタイトル戦の賞金や対局料もカット、カットの嵐です。(良くて現状維持)
それでも赤字額が減りません。
うーん、打つ手がありません。
最終手段として禁断の打ち手はありますが‥‥。
棋士の人数をカット |
棋士の給与をカット |
棋士の退職金、年金をカット |
対局料の一部無償化(ベスト64以上のみ) |
全員で貧しくなっていくのか、それとも一部の人が切られていくのか。
最近では、まだ対局できそうなのに引退をする棋士も増えてきていますし、業を煮やして自分から辞めていく若手棋士も多いです。
さらに今後はどうなっていくんでしょうか。
個人的には武宮陽光理事長と関達也常務理事の手腕に期待しております。
(小中学生団体戦全国大会の復活はグッジョブでした)
常務理事組の中では年齢が低いほうになりますからね。
年齢層が高い棋士が多いので、意見は通りにくいのでしょうが、若手の意見を汲めるような策をお願いしたいところです。
何度も言ってますが「若者がいない業界に未来はありません」
ここ5年で対局料は大きく下がっています。
もう毎年のことですが、あの棋戦がヤバい、また対局料が下がったなどなど‥‥。
週刊碁や囲碁書籍などの出版停止。
囲碁教室、囲碁サロン、イベントの減少。
どんどんと収入は減ってきています。
もちろん危機感を持って頑張っている棋士もいますが、大半は囲碁人口を増やそうというよりは生活をするうえで必要な仕事をしているという感じに見えます。(ボランティアでも普及している棋士はいます)
本来は日本棋院から出ている固定給分くらいは純粋な囲碁普及活動をしなければいけないと思います。
しかし、そんな余裕がないのか、やり方が分からないのか、やる気がないのかは分かりませんが、活動は少ししか見かけません。
もうここまでくると、棋士だけの力で状況を好転させることは難しいところまできてしまいました。
あとは誰がどのくらいの割合で改革の痛みを受けるのかということに‥‥。
ただ、5年前の記事でも書きましたが、収入が低くなった当時でも囲碁棋士を続けている人がほとんどです。
さらに当時よりも低くなった収入(対局だけで年間100万はかなり厳しい)でも囲碁棋士を続けている人がほとんどです。
その理由は記事のとおりですが、囲碁好きにとって囲碁棋士は幸せな職業で天職です。
人生の満足度は高いのですが。さすがにそろそろ限度が来ていると思います。
あとはそれぞれの棋士がどうするか判断することでしょう。
10年ほど前の話ですが、低い額で仕事を受けると、棋士のブランド価値が下がるという声をよく耳にしました。(今でも言ってる人がいます)
そうこう言ってるうちに、結果的には年々、棋士のブランド価値は大きく下がっていきました。
そして、現在の日本棋院の体制を続けるのは不可能というのが現状です。
たしかに囲碁や囲碁棋士の本質的な価値はとても素晴らしいものですし、昔も現在も何も変わりません。
私も心からそう思っています。
ただ、それは囲碁に理解がある人限定の話であって、そもそもの囲碁に理解がある人が減っているということが問題です。
とにかく囲碁界の復興のためには、日本棋院と棋士が一丸となって幼稚園、保育園、小学校や学童、中学校、高校、大学など教育機関で入門教室などの囲碁普及をするよりありません。
棋士派遣をする予算がないということなら、ボランティアでやるよりありません。
それこそ固定給の高い棋士から順にですね。
「棋士の価値が〜」と言ってる場合ではありません。
日本棋院と囲碁棋士の存続の危機なのですから。
ずけずけと好き放題に意見をしてしまいましたが、私もできるかぎりのことはしています。
近くの公民館で囲碁教室をしています。
さらには小学校で囲碁教室のチャンスがあったら、積極的に受けますし、囲碁に理解がある先生がいたら、囲碁教室をさせてくださいとお願いしています。
もちろんボランティアです。
そのかいあって、いくつかの小学校で教室をやっていますし、今後も新たにできそうなところがあります。
仕事としての教室は棋士同様に減り続けていますが、これを打開するには入門教室などで種まきをするしかありません。
ぜひ、ご覧いただいている皆様も一緒に応援やご支援をよろしくお願いいたします。
ここ数日の記事で囲碁界の現状をご紹介したのですが、ふと一昔前はどうだったかなと思いました。
そちらも検証してみたいと思います。
紹介するのは2019年10月に書いた私のnote記事。
まぁまぁ、タイトルから煽ってる感じですね(笑)
当時は永代囲碁塾の出来事はホームページに記事を書いて、個人的な考え方のようなものはnoteに書くと分けておりました。
下記に再掲しますので、ご覧ください。
そして、この記事の感想は次回の記事で書きたいと思います。
SNSですごく立派で囲碁愛に溢れるご意見が書いてある記事を見つけたのでまずは共有を。
こういう方がたくさん増えると嬉しいですね。
さて、本題に。
このご意見は普通の業界から考えるとごもっともです。
では、なぜ囲碁界は昔からこうなのか。
そして、今なお、変革が起きる気配がないのか。
業界人の端くれとしての意見を述べます。
まずは一言で片づけるなら、表題のとおりです。
今回の「囲碁界の定義」は、囲碁棋士を中心とした日本棋院周辺の方々という前提でお話しします。
その他の方はまた別問題ということで。
正直なところ、囲碁界は表向きの口では「ヤバい、ヤバい」と言っていながらも、危機感はそこまで感じていないと思います。
なぜならば、私から見る囲碁棋士には幸せな方が多いからです。
これからヤバいと思っていない理由を挙げます。
① 囲碁棋士は本人が幸せを感じている |
② 自分の人生の全てであるような成功体験を捨て切れない |
③ 囲碁以外の教育をほとんど受けていない |
この記事を見ている皆さんは
① 仕事は好きですか?
② 仕事をするうえで、いくらくらい給料が欲しいと思ってますか?
囲碁棋士の皆さんは上記の質問に
① 仕事(囲碁)は大好きです。ずっとやっていたいです。
② お給料は多いほうがいいけれど、自分の意に沿わないことをするくらいなら少なくてもいいです。
ということを真顔で言えるほどの「囲碁(仕事)好き」です。
一生、囲碁だけやっていたい。
そして、それが実現するような錯覚を持たせてくれる業界なのです。
現に月に20万円をもらえれば、囲碁指導をしなくても、一生対局だけでも構わないと思っているような棋士は多いはずです。(最近はその20万ですら、厳しい世界になってきましたが・・・。)
さらに、指導碁や囲碁教室など囲碁指導が好きな棋士は多いです。
解説の仕事や、出版の仕事など意外と対局以外の収入もあります。
そして、大事なところが、棋士は外で派手に遊ぶよりも囲碁の勉強をしていたいという人が多いです。
収入が少ないから派手な遊びをしないということもあるのでしょうが、本質的には前者が多いかな。
そんなにお金を使わない生き物なのです。
何となく仕事を中心にしていて人生に不満がある人は、浪費癖があるケースが多いような気がしますが、囲碁棋士はそんな事態に陥りにくいのです。
人生において、お金の優先順位が低いんだと思います。
囲碁が打てて「それなり」に暮らせていければいいやと。
それなりのレベルというのは人それぞれなのです。
それが②の答えに当てはまります。
皆さんはどうでしょうか。
一生、同じ仕事をしていて月20万で満足。
そんな仕事に出会えていますか。
小さい頃から囲碁棋士を夢見て、努力した結果で棋士になれました。
それは一つの成功です。素晴らしいことです。
一番多いケースは小学生低学年には囲碁を始めて、中学卒業~高校卒業くらいでプロになる感じかな。
青春時代の全てを捧げていると言っても過言ではありません。
自分たちは周りの同年代が外で無邪気に遊んでいるようなときや、学校で青春を謳歌しているような時代から、強烈な努力によって得た成功。
それを大人になってから「投げ出す(改革する)」というのは難しいと思います。
自分の職業に誇りを持っていれば持っているほど、その思いは大きくなることと思います。
囲碁愛好家からは「先生」と呼ばれて尊敬される仕事です。
誇りを持っていてほしいですし、誇りを持つのは当然のことだと思います。
社会教育は囲碁に勝つということしか教えてもらっていない人がほとんどです。(もちろん、他人に迷惑を掛けないという最低限の指導はある)
右を見ても、左を見てもライバルです。
皆さんが一般的に思うような「仕事仲間」というのはいません。
「良きライバル関係」という表現になるでしょうか。
棋士は地頭もいいし、誇りもある。
小さいころから自立した精神を持っているので、良い意味で他人に頼るということが苦手な人が多いように思います。
悪い意味でいうと団体行動ができない。
自立した精神と、社会人的に自立しているかは別問題かと思います。
私は囲碁棋士を志すも、その夢はかなわずに強制的に一般社会へと放り出されました。
しかし、幸運にも実家に仕事があり、数年はぬるい環境で社会というものを経験できたのはよかったです。(給料は最底辺でとても社員と呼べるレベルではありませんが)
それでも、仮に給料が良くても急に厳しいところに放り出されていたらどうなっていたか。
自分では頑張りきれると思いたいところですが、実際のところはどうなんでしょう。
精神を病んでもおかしくないでしょうね。
囲碁棋士の皆さんがこの状況になったらどうなるのでしょうか。
仕事は普通にバリバリとできる能力があると思いますが、囲碁以外のことをやりたいと思うかどうか。
そこに幸せがあるのか。その恐怖心はどれくらいのものか。
一般の方には理解できないレベルだと思います。
私はかなり囲碁棋士の近くにいますが、それでも理解できていないかも。
どこの世界も特殊なことはあるということを、上記の記事を書いてくれた方から言われました。
・小さい頃から全てを犠牲にしてでも就いた仕事
・誇り高い仕事(気持ちは成功者)
・引退のない仕事
・何もしなくても年収100万くらいは確定する(最近はそうでもないかも)
・お金=人生の幸せと思っていない。お金の優先順位が低い。
・囲碁だけできれば幸せである
・囲碁だけやっていれば生きていけている時代が確かにあった。
色々と一般社会からは大きくかけ離れている状況かと思います。
他の世界も特殊なケースはあるかと思いますが、囲碁界はかなり特殊なほうだと感じます・・・。
棋士であるかぎり、対局ですべて負けても年間で10局程度あります。
さらに引退がないというところ。
あとは臨時的に日本棋院から普及の仕事も回してもらえます。
囲碁棋士の皆さんは現状をどこまで本気でヤバいと思っているのでしょうか。
私にはその本気度をまだ伺えません。
それどころか幸せそうにしている棋士が多い感じもします。
外からのご意見もあるように、死ぬ気でやれば何だってやれることはあります。
ただ囲碁界は本当に愛好家や支援者の「質」が良く、恵まれている業界です。(数はどんどんと減っていますが)
現状で満足するのか、それとも次のステップにいくのか。
さすがに囲碁だけやっていれば最低限の生活で良いとは言っても、その最低限というレベルを超えてきそうなご時世で何をするのか。
囲碁界は「ぬるい」「甘い」という意見はごくまともです。
ただし、人生の幸せにおいて前提が違う生き物です。
一般的な皆さんの意見とは違うことのほうが多いです。
・それが幸せなのか、不幸せなのか。
・囲碁棋士は本気で変革を望んでいるのか?
・できれば、ずっとこの雰囲気で生きていきたいのか。
囲碁棋士ではない私には本当のところは分かりません。
多分、分からない生き物だからこそ囲碁棋士になれなかったのでしょう。
しかし、私には「囲碁棋士を志し、院生になった」というかけがえのない経験を生かしてできることはいっぱいあると思うので、地道に頑張りたいと思います。
これで何となく私が感じている囲碁棋士を理解していただけたら幸いです。
あくまで私の個人的な見解なので、これと違う感覚を持っている棋士もたくさんいらっしゃると思います。
全てに当てはまるとは思っていませんが「心当たりあるくらいにはかすっているかな」とも思っています。
意に沿わない部分は、囲碁棋士になれなかった者の戯れ言として捉えていただければと思います。
前回の記事はこちらです。
今回は日本棋院の費用面を見ていきます。
これらの情報ですが、私は日本棋院の外部の人なので、確実な情報ではないかもしれません。
あくまで個人的な見解で、参考程度の情報ということでご承知おきください。
事業報告や決算報告は日本棋院のサイトをごらんください。
① | 棋院の維持費 |
② | 職員の人件費 |
③ | 棋士の人件費 |
④ | 囲碁普及活動 |
※(永代調べ)
【 東京本院 】
日本棋院は昨年に「創立100年」を迎えましたが、現在の市ヶ谷にある東京本院は約55年ほど前の1971年に建てられました。
55年も経つとさすがに老朽化も進んでいて、毎年のように設備修理費などで多額な出費があります。
特に配管系のメンテナンス額がすごいとか・・・。
メンテナンスだけでなくて、貸室のリフォームなどもやってほしいところですが、そんな余裕はないでしょう。
【 中部総本部 】
実は東京本院だけでなく、中部総本部のビルも1973年に建てられていて、老朽化が進んでいます。
実際に行ったことがないので噂レベルの話とはなりますが「東京本院よりも先に、何かしらの対応策が必要だ」との声も…。
そのうえ、最近の物価高による経費高騰…。
電気代も上がっているし、何をやっても費用が高くなっていますよね。
もう、あちらこちらで悲鳴が上がっています。
【 関西総本部 】
こちらは賃貸かな?
あまり情報はありません。
【 有楽町囲碁センター 】
こちらは八重洲囲碁センター時代から引き続きの、賃貸です。
昔は客足も順調で、経営も良好だったと聞いております。
しかし、コロナ直撃のあたりから怪しい雲行きに…。
閉館が常に視野に入っている状況なのは間違いないでしょう。
私には聞いた話でしかない伝説のバブル時代。
「囲碁人口が1,000万人を超えていた」らしく、景気の良いバブル時代も合わせて、お金が余りに余って絶頂の時期だったでしょう。
職員も時代に合わせたそれなりの給与体制になっていたようです。(時代的に他の業界も同様だと思うので相対的に高かったかは分かりませんが)
しかし、そこをピークに囲碁人口は減少を続けていきます。
日本棋院の収入源に合わせて給与体制も見直されて、一時期に大量リストラがありました。
現在の若手正職員の給料は、聞いた感じだと他の業界よりもはっきり安いと思います。
ここは「メスの入れようがない」と予想します。
ちなみに中堅職員以上のお給料は情報がないので分かりません。
予想ですが、圧倒的な人手不足に陥っているようなので、そんなに高いという感じもないのかなと思います。
職員側の人件費はカットできる余地はそんなにないのではないでしょうか。
もし、できるとすれば業務効率化のシステム構築を図るよりなさそうです。
【 棋士の固定給 】(段位や年数、昔の実績の考慮)
ここは私の年代より少し上のあたりを境にして、年代が下の棋士に対して明らかに「不公平な格差」が生まれているそうです。
基本給に関しては法律の厳しい範囲内になるので、既得権としてさわりにくいのでしょう。
ただ、財政難ということで棋院が潰れるという事態が想定されるのあれば、背に腹は変えられずに改定もあることでしょう。
現状で個人的な意見を言わせてもらうと、基本給は何もしなくてももらえる分ですが、対価として額に合わせた囲碁普及活動をするべきだと思います。
額が多い人から順に、たくさんの囲碁普及をするというのは当然のことだと思います。
【 社会保険料を負担 】
棋士も社会保険に加入しているようです。
色々とゴタゴタもあるようですが、詳細は不明です。
棋院側も一定額の社会保険料を負担しているものと思われます。
もしかしたら、この部分は全てを解除して負担0にできるかもしれません。(法律との兼ね合いあり)
【 対局料 】
こちらはスポンサー収入の中から運営費を差し引いて割り振っていると思います。
割り振り方は棋戦ごとに決まっており、詳細は分かりません。
スポンサーと棋院の交渉次第ということでしょう。
ただ、年々対局料の単価が減っていると聞いています。
関達也常務理事のXのポストでは、入段当初から大幅減(半分くらいだったかな?忘れましたが)になっているとか…。
まぁ、半分くらいになっていても不思議ではありません。
今後も減り続けていくでしょう。
さらには、スポンサーが「もう棋戦辞める」という事態もあり得ます。
現に本因坊戦は存続自体も危なかったようですから…。
私の今後の予想としては、棋譜が掲載されない予選には対局料が払われないようになると思います。
イメージとしてはベスト64から対局料が発生するという感じでしょうか。
韓国では一部、このような動きもあるようです。
【 退職金や棋士年金 】
こちらもなかなかの額を積み立てているようです。(貸借対照表の引当金に当たると思います)
詳細は分からないので、何とも言えませんが、財政難であればカットの対象になるかもしれません。
これも法律面との相談にはなるのでしょうか。
【 棋士への人件費まとめ 】
もうこの分野は正直、ややこしすぎてブラックボックス化しています。
一つ言えるのは、この分野で棋院の費用を削減すると、棋士の収入が減るということです。
話題になっている「新規の囲碁棋士採用人数を減らす」、このあたりも経費節約策ということになるのでしょう。
あまり良いこととは思えませんが、収入の規模に合わせた費用ということはあるので、仕方のない部分もあります。
(指導碁や教室などではなく、純粋な囲碁普及が前提)
【 入門教室の拡充 】
これが一番の課題です。
未就学児、小中学校、高校や大学など、子どもたちへの普及が急務です。
さらには会社の囲碁部への普及なども有力です。
既存の囲碁ファンからはしっかりとお金をいただき、入門教室など新規開拓のほうへ資金を回すという流れにするよりないと思います。
そして、ご新規さんをしっかりとした囲碁ファンに育てて・・・。
その繰り返しですね…。
最近の動きで「小学校への棋士派遣をカット」したり、ここの予算を減らしていくのは、急所を逃していると思います。
【 広報 】
ここが明らかに弱いです。
囲碁の素晴らしさを世に伝えないといけないのですが…。
これはTVにCMを流すようなイメージで、お金をかけなければいけない方法も多いでしょう。
もちろん、SNSや動画を駆使して無料でできることもあると思います。(それでも制作費や人件費はかかる)
棋院は圧倒的な人手不足ということなので、棋士と職員が力を合わせて、やれることをやっていくしかないですね。
前回の記事はこちらです。
今回は日本棋院の収入面を見ていきます。
これらの情報ですが、私は日本棋院の外部の人なので、確実な情報ではないかもしれません。
あくまで個人的な見解で、参考程度の情報ということでご承知おきください
確実な情報は上記の日本棋院のサイトごらんください。
① | スポンサー収入 |
② | 寄附金収入 |
③ | 会員収入 |
④ | 販売収入 |
⑤ | 棋院利用料 |
※(永代調べ)
個人的にぱっと思いつくのはこんな感じでしょうか。
【 プロ棋戦運営、アマ大会の運営など 】
もっと企業や団体に営業をかけて増やすしかないです。
しかし、現在の日本棋院は圧倒的に「人手不足」。
バブル時代の給与制度(棋士、職員)からうまく脱却できずに、ある時期に職員を大量リストラしたという経緯があります。
あのあたりから人手不足の声が、あちらこちらから聞こえるようになりました。
残念ながら、ここはもう棋士が頑張るしかない分野になっています。
【 各種寄付、免状の発行など 】
こちらももっとアピールが必要なところですが、善意の寄附に対して強要できるものではないので難しいところです。
あとは、昔から免状をもらうために寄付をするという風潮がありますが、これは好ましい傾向とはいえません。
本来は寄附をしてくれた方に免状を発行するという流れだったのに、趣旨が変わってきております。
囲碁人口が減ったら純粋に免状をほしいという方は減ってきます。
純粋に囲碁好きを増やして寄附を促し、免状発行という流れが理想です。
ただ、それは①と同じく現状では人手不足もあり、対策が難しいところです。
たとえば、東京本院や中部総本部の所有ビルはかなりの老朽化が進んでいます。
これから両方の建物を建て替えますとなったときに、金額はどれほど集まるか・・・。
近年の将棋のクラウドファンディングは億単位で集まっていましたが・・・。
ひと昔前に現在の市ヶ谷の本院を建てたときはかなりの寄附金が集まったことでしょう。
囲碁人口が当時から少なく見積もっても「3分の1程度になった現状」ではかなり厳しいです。
【 書籍関連の会員、インターネット会員、ジュニア会員など 】
会員数も囲碁人口減少に伴い、崩壊寸前です。
さらに紙の新聞ベースだった「週刊碁の廃刊」がトドメだと思います。
地方への情報発信が極端に減りました。
その影響で棋士への親近感が薄れ、棋士への評価が落ちています。
(もちろん棋士の評価についてはこれにかぎりませんが)
書籍関連の会員数も大きく落ち込んでおり、デジタル化への移行が鍵となりますが、現在の囲碁人口の主要年齢層では、すぐにというのは難しいでしょう。
唯一の希望とも言える「幽玄の間のネット碁会員」ですが、それもなかなか伸び悩んでいるようです。
【 囲碁用品、書籍関連、囲碁グッズなど 】
こちらも囲碁人口減少に伴い、崩壊気味かと思います。
囲碁人口が減少したら販売が減るのは当たり前のことです。
昔は高い価格帯でもぽんぽんと買っていく方がたくさんいました。
しかし、現代の日本ではそんなに余裕がある人は減ってきています。
さらには、少なくなった富裕層の中でも囲碁好きが減ってきています。
まさに崩壊寸前といえる状況です・・・。
ただ、最近は「経営者や芸能人」などマンパワーの集まるところに集中的に普及をしていく動きもあります。
泥臭くコツコツとやるしかないですね。
【 イベント時の貸室、利用者の席料など 】
棋院利用料は意外と良い収入があると思います。
私も何回もイベントで使用させてもらっていますが、市ヶ谷という東京のど真ん中という立地もあり、なかなかの価格がします。
とはいえ、他の業界からしてみると、このスペースの広さにしては安いという声も聞かれます。(その際は私も営業をかけています)
空いている日も多いので、ここが増えると収入アップに貢献します。
こちらは「個人の囲碁ファン」に向けた、より良いサービス提供がカギです。
ぜひとも企業や団体だけでなく、個人の愛好家に向けても頑張ってほしいです。
イベントのみならずに、棋士の教室だったら増やせるはずです。
もう固定給はやめて、歩合制でバンバンやるしかないのではないでしょうか。
時間帯や価格など、サービス対象者を分けて運営してほしいです。
① | 対局料 |
② | イベント招待 |
③ | 執筆、出演料 |
④ | 教室・レッスン |
⑤ | 棋院からの給与 |
棋士は特殊な存在で「個人事業主」として各棋院に所属するという立場になっています。
今回は棋院の収入面を書いてみました。
収入面も課題が山積みでしたが、費用面はさらに厳しい現状です。
以下で説明していきます。
【 冬季試験 2名→1名 】
「夏季の院生内部試験から1名出す」というところは変わりません。
院生1名(夏季の内部試験)+冬季試験1名の「合計2名が年間の採用人数」ということになります。
従来の採用人数から「毎年1名減る」ということになります。
外来が参加できる冬季試験の枠が1名減るため、外来受験者にとってはかなり厳しい状況になります。
日本棋院としては院生優遇は持続しながらも、全体の採用は減らすということですね。
① | 【 2028年度からはそれぞれの院生から1名ずつ(内部試験) 】 |
② | 【 2029年度からは、関西と中部を対象とした統合試験から1名 】 |
③ | 【 ①と②を年度ごとに交互に実施 】 |
④ | 【 外来は3年以上の院生経験者のみが統合試験に参加可能 】 |
実は関西と中部についてはそれほど詳しくはないのですが、日本棋院の過去の採用情報を見ると例年は①が続いている感じですね。
②については従来から採用人数を減らす内容ですね。
③については「関西と中部の合計が2年間で4名」だったところを「2年間で3名」に減らすということです。
④についてはやはり院生優遇路線ですね。
院生経験者ではないかぎりは中部や関西からは棋士にはなれないということです。
純粋な外来受験者は東京で受けるしかないということになります。
【 2028年度から2年に1回の実施 】
毎年開催から2年に1回の実施ということで単純に採用人数が減ですね。
こちらは小林覚プロが理事長時代の肝入り政策です。
これまでに何人か適用されて入段した女流棋士がいます。
詳細は省きますが「条件を厳しくした」ということですね。
最近は関西棋院で真逆の動きがありました。
賛否両論あるかとは思いますが、私は関西棋院の方針が正着だと思います。
囲碁業界全体のことを考えると、棋士の人数が減って良いことはありません。
さらに若手が減っていくというのは危機的な状況です。
若手が入ってこない業界に明るい未来が待っているわけがないからです。
とはいえ、囲碁界全体にお金が入ってこない、日本棋院の収益悪化ということで、どうしようもない部分もあります。
全体の採用人数が減るというのは、棋士になれる確率がぐっと減るということです。
永代家も長男(もしかしたら長女も)が囲碁棋士を目指していることもあり、とてもつらいです。
どうにかして「若手棋士の人数」が増やせないものでしょうか。(費用面にて)
長くなってしまったので、今回はここまで。
次回からは日本棋院の現状を見ていきます。
見ていくポイントは「収入」と「費用」の 収益面 に注目してみます。
【 囲碁普及の定義 】
囲碁界が年々と厳しい状況になっております。
この厳しい状況を打開するためには、囲碁普及をするよりありません。
誰しもが分かっていることです。
ただ、SNS等を見ていると「囲碁普及の定義」が人によってバラバラのように感じます。
私なりに囲碁普及の定義を定めて、議論がすっきりと進むように後押ししたいと思います。
【 普及とは? 】
普及という言葉の意味を調べました。
1. 広く行き渡ること。
2. 物が多くの人々の手に届くようになること。
【 囲碁普及とは? 】
普及という言葉に囲碁を付け加えてみます。
1. 囲碁が多くの人々に知れ渡る
2. 囲碁をやる人が増える
1のほうは囲碁に興味や関心を持ってもらえばクリアだと思うので、実際にプレイしなくてもOKだと思います。
2はプレーヤーの増加ですね。
【 囲碁普及は誰の役目? 】
これは日本棋院や関西棋院(以下、棋院)の仕事だと思っています。
棋院は「公益財団法人」です。
公益財団法人は寄付金をいただいて、文化などの専門知識を生かして社会貢献を行う団体となります。
ただ、棋士は棋院に所属してはいますが「個人事業主」の扱いになっています。
このようなことから囲碁普及は棋院の役目であり、棋士は仕事として請け負う立場だと思います。
棋士は、仕事先から報酬を受ける場合に、その分だけ動く(対局や仕事、あれば固定給)ということではないでしょうか。
棋士は自分の報酬を高めるために、自分のブランド価値を高めることに集中するのがベストだと思います。
1. 日本棋院が囲碁普及をする(囲碁に興味を持ってもらう、初心者から愛好家へ育てる)
2. 棋士は対局や仕事をする
3. 愛好家は囲碁を楽しむ
これでいければ理想かなと思います。
【 普及を他の業界に置き換えると 】
例えば、精肉会社がお肉を普及させる方法として、スーパーなどでの「無料試食」があると思います。
これはお肉を売っている精肉会社が材料費や人件費などを負担して、お客様に無料で提供するものです。
提供する販売員は自己負担をするどころか、お給料をもらいながら試食をしてもらうはずです。
お肉 = 囲碁
会社 = 棋院
販売員 = 棋士
とすればイメージが沸きやすいですよね。
普通の業界では販売員が報酬なしで仕事することはありません。
ましてや、会社がうまくいってなければ、販売員は転職を考えるくらいが普通でしょう。
【 囲碁普及の定義・まとめ 】
囲碁普及とは、囲碁を知ってもらい、実際に囲碁を楽しんでもらう入り口を作ることだと思います。
囲碁を知ってもらうための経費を払う=「ブランディング」
無料の普及活動=「入門教室」
無料に近い報酬で活動する=「子ども全体への囲碁普及」など
囲碁普及は囲碁のブランディング、入門教室、子どもへの普及など、報酬を得にくい分野を担当することだと思います。
そのために公益財団法人が存在して、寄付金をいただいているのですから。
【 既存の愛好家向けの活動は囲碁普及? 】
しっかりとした金額をいただいて、囲碁を楽しんでもらう愛好家向けの活動は、囲碁普及ではなく「仕事やビジネス」に近いと思います。
ただし、完全に分ける必要はなくて、囲碁普及と囲碁ビジネスを両立させることは可能だとは思います。
難易度はものすごく高まりますが。
私は囲碁普及と囲碁ビジネスは別のものと認識して活動しています。
囲碁普及活動だったらボランティアでも飛んでいきますし、仕事だったらボランティアとして引き受けることは、なにか事情がないと難しいです。
仕事なのにボランティアをしてしまうと「あちらでは無料なのに、こちらではしっかりとした料金を取るのか」となりそうですし。
これは棋士も同じではないでしょうか。
囲碁界がいまいち協力態勢に欠けると思われているのはこういうところかもしれません。普通の業界でも他社と一緒にやるのは難しいですから。
【 最後に 】
とはいえ、これまでに書いた囲碁普及に対する理想的な状況は、今の囲碁界にありません。
このような状況を危惧して、棋士や囲碁の業界人(アマ)、囲碁愛好家などが棋院とは別で囲碁普及活動をしています。
囲碁は対局時間や道具などで手軽さがないこともあり「近代に合わないゲーム」だと思うのですが、それでも今日まで囲碁が残ってきた原動力は、棋院だけではなく「囲碁界全体で囲碁普及活動をしているから」だと思います。
囲碁の文化を守ろうと一生懸命に動いてくれている方たちのおかげです。
本当にありがたいものです。
これで終わりますが、このブログで「囲碁普及の定義」をしっかりと確認して、議論がよりすっきりと進展してくれれば、これ以上にうれしいことはありません。
私の子どもたちも囲碁を楽しんでいます。
これからの囲碁界を寂しいものにはしたくありません。
私は微力ながらできることを頑張ります。