こちらが河野プロの提言となります。
順位戦システムは前回の記事で紹介したので、今回は河野棋士が提言する「棋士はもっと教室やイベントを行うべきだ」という点に焦点を当てていきたいと思います。
前回の記事はこちら
市ヶ谷にある日本棋院本院を例に出しますが、部屋はたくさんあります。
1階は3部屋。
2階は大ホール+1部屋。
3階も3部屋。
5階は和室が4部屋。
6階は3部屋。
平日なら7階もあります。(土日は院生が利用)
こんなにたくさん部屋があるので、土日平日問わずに全てが満室になるのは珍しいことです。
こんなに空き部屋があるのなら、棋士が「とりあえず」教室でも指導碁会でもイベントでも何でもやればいいのにと思います。
なぜ棋士はもっと教室をやらないのか。
それは、日本棋院が棋士と言えども「空き部屋を無料開放していないから」だと思います。
それでは棋士にとっても「とりあえず」教室をやってみようという気にはなれません。
部屋代をいきなり払って、生徒が来るかどうか分からない教室を始めるというのはハードルが高すぎます。
せめて、生徒の人数に応じての利用料などを設定しての歩合制なら始めやすいですよね。
日本棋院からしたら、鍵の開け閉め(特に夜間)や人員配置、お金の管理、希望の棋士に部屋をどう配分するかの調整など、面倒な仕事が増えてしまうことに対して、多少の利用料収入では割に合わないという気持ちも分かります。
その判断が先行して、現在、日本棋院の囲碁教室はどんどん減っています。
しかし、視野を広げると日本棋院に足を運んでもらうというのは、他にもいろんなメリットがあります。
せっかく日本棋院に来たから「指導碁を申し込んでみようかな」とか「売店で買い物しようかな」「今度、こんなイベントあるなら行ってみよう」などと利用料収入以外の収益も生まれます。
やらない理由はいくらでもつけられます。
でも、やる理由を優先的に考えたら棋士は「とりあえず」教室やイベントをやるしかありません。
日本棋院は、棋士に対してある程度の事務作業をお願いする代わりに、空き部屋の開放をすればいいと思います。
昔からそうですが「対局だけで食べていける棋士は上位陣だけ」です。(最近は本当にひどい有様ですが)
なので囲碁普及活動で指導料などをいただいて生活している棋士がほとんどです。(囲碁界では既存の囲碁ファン向けの活動を“お仕事”と呼んでいます)
棋士はこれまで基本的には、お仕事をしたらお給料がもらえる文化で通ってきました。
しかし、現在は日本棋院が棋士全体に十分な仕事を振れるほどの数はありません。
そうなると棋士自身が新規開拓をしていくしかないのです。
もともと棋士は個人事業主ですから、何でも自分でやるしかありません。
とはいえ、対局についてはプロフェッショナルですが、教室の管理や営業などについては何も経験がなければ素人同然です。
だから、これはなかなかしんどいという気持ちは分かります。
囲碁で食べていくためにこのしんどいことに挑戦するのか。
それとも、そんなしんどい思いをするなら囲碁以外で転職するのか。
特に若手棋士は年配棋士よりも待遇が悪いこともあり、切実な局面に来ています。
全てを解決するのは難しいとは思いますが、まずは日本棋院が「とりあえず」空き部屋の開放という、できることから始めたらいいと思います。
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