前回は「模様の接点の考え方」を説明しました。
今回はレッスンで実際に出てきた局面を使って説明します。
白が△と打ったところです。
まずは着手を選ぶ前に、模様の定義をしっかりと考えていきましょう。
黒1(A)は小さいわけではないのですが、ベストとは言えません。
下辺は三間しかないので、幅がそう大きいわけではありません。
さらには左辺の白模様(四間)への打ち込みに対しては影響力を持ちません。
続いて、白2で模様の幅が大きい上辺(五間)へ打ち込まれると、自慢の黒模様が荒れてしまいます。
場合によっては白からAのオサエ込みで、黒の眼形すら心配になってくる展開ですね。
この展開は黒がもったいないでしょう。
模様は全体の幅で考えるのではなくて、それぞれの石と石の間の幅を数えていくと、より精度が上がっていきます。
黒1(B)で黒模様を広げながら、展開によっては左辺の白模様への打ち込みを狙うのが正解です。
このようにお互いの模様に影響を与えるような場所が「模様の接点」となります。
白2の打ち込みに対しては、黒3を決めてからの黒5が定石のようになっています。
これで白の打ち込みは十分にかわせます。
白2の打ち込みと、三々を見合いにしておく考え方ですね。
黒1(C)は右上黒の確定地を広げています。
前回で説明したように、打ち込みがない場所である確定地から陣地を増やすのは、家の増築のようなもので、そう大きな価値は持ちません。
さらには右辺白も確定地のところなので、模様の接点とは全くの反対の性質を持っている場所となります。
言ってみれば「確定地の接点」?(あまり聞かないですが)
とても小さい場所となります。
・模様=打ち込みが残る場所
・確定地=打ち込みがなく、陣地が確定している場所
・模様は全体で見ずに、石と石の間に幅がどれくらいあるかを確認する
・模様の接点=お互いの模様に関わる場所は、価値が高い
永代囲碁塾では「技術面」だけでなく、このような「基礎的な考え方」を中心に指導しています。
基礎がしっかりしていないと、技術面の勉強をしても効果を発揮しにくいでしょう。
まずは永代囲碁塾で基礎から学ぶことをお勧めします。
前回の記事はこちら
問題図・黒番
前回に取り上げた対局の序盤です。
弱い石は作らないようにしたほうが良いですが、実戦ではうまくいくことばかりではありません。
それでは問題図の▲二子のように弱い石ができたときはどうするか。
前回は「弱い石から動け」という大事な格言を紹介しましたが……。
問題図は黒番で、A と B の候補手を用意しました。
まずは着手を決める前に行うべきは「石の強弱の状況判断」でしたよね。
状況判断をしてから石の方向を考える癖をつけましょう。
1図・白のほうが圧倒的に強い
早速、石の強弱を判断してみましょう。
黒のほうは▲二子が弱いことは、誰の目で見ても明らかですね。
対して白はどうでしょうか。
△二子はそれほど強いとは言えないものの、左辺から下辺にかけての白一団がとても強いです。
左辺では、黒が不利な戦いになることは間違いありません。
2図・捨て石作戦、上辺黒を大模様に
黒1 と弱い石(黒二子)を捨てる方針を採ります。
白2 からわざと取らせて、上辺黒模様拡大のための「捨て石」となってもらいます。
どうしても捨てたくない石に対しては「弱い石から動け」という格言を徹底するよりありませんが、この局面のように捨てても大きな影響のない石であれば、思い切って捨てる手も考えられます。
この黒二子を助けたいなら、こうなる前に「弱い石から動け」を実践すべきでした。
黒5 まで進んで上辺の黒模様も拡大し、捨て石作戦は成功しています。
3図・弱い石を逃げたいが重い
黒1(B)と弱い石から動きたくなりますが、白8 まで進んでも黒がうまくいったとは言えません。
左上の黒は封鎖されていますし、左辺の黒も棒石のようになり、依然として弱いままです。
今後は白からの攻めが予想され、黒の心配が尽きません。
これも黒二子を無理に動き出したことが原因です。
「弱い石から動け」…弱くなる前に動くのがベスト |
「捨て石」…弱くなり過ぎた石は、重くなる前に捨てる選択肢もある |
永代囲碁塾では「技術面」だけでなく、このような「基礎的な考え方」を中心に指導しています。
基礎がしっかりしていないと、技術面の勉強をしても効果を発揮しにくいでしょう。
まずは永代囲碁塾で基礎から学ぶことをお勧めします。
囲碁で一番大事なのは石の強弱です。
「大場より急場」という大事な格言がありますよね。
急場は石の強弱によって決まることから、石の強弱が最も大事だと分かります。
勉強熱心な方は格言などをよく知っています。
しかし、「知っている=知識」というだけであって使い方が分かっていないと、とてももったいないことになってしまいます。
「知識+応用力」は鬼に金棒なのですが、応用力がなかったら立派な知識があったとしても「猫に小判」にしかなりません。
「大場より急場」、「強い石から動くな」、「弱い石から動け」などなど立派な格言はありますが、どれも石の強弱が分かっていないと使えないものばかりなのです。
まずは石の強弱を判断するところから始めましょう。
問題図・黒番
実際のレッスンでの局面(五子局)です。
白が△と打ったところですが、黒番でどのように対応するかを考えましょう。
黒はA〜Cで用意しましたが、ここで注意。
分岐点に差し掛かった場合は、着手を決める前に必ず「石の強弱の判断」をしましょう。
この状況判断を行うことで簡単に棋力アップできるのでお勧めです。
特に知識をしっかりと持っている方は、適宜の状況判断をすることによって、「鬼に金棒」になるというのは前述のとおりです。
▲の一団が一番弱い
A〜Cの近くの石を状況判断してみます。
黒Aの近くの左上の黒の一団は心配する必要もなく、強い石です。
黒Bの近くの×一子は弱い石ではないけれど、ほっておきすぎると心配になるという感じです。
黒Cの近くの▲一団は、少し攻められただけですぐに心配になるような弱い石です。
この状況判断をするだけで、もうどの方面に向かうかは一目瞭然ですよね。
「強い石から動くな」、「弱い石から動け」でしたよね。
弱い▲から動く
黒1(C)が正解です。
弱い▲一団と、ほっておくと心配な×一子の連携を持てば、もう心配ありません。
あとは気兼ねなく攻め放題となります。
白の一団を攻めているうちに、右辺の黒模様も大きな実利化が期待できる展開です。
左上黒の強い石から動くと…
黒1(A)と3は、なんの心配もない強い石から動いてしまいました。
対して白には2、4と、黒の弱い石の方向を動かれます。
おかげで黒5、7と、ただツナがるだけの価値が小さい手を打たされてしまいます。
その隙に白は8まで右辺で黒地化を防ぎつつ、逆に立派な白地を構えることができます。
黒の大失敗です。
無難な展開
黒1(B)はそんなに悪くないところではありますが、黒Cには劣ります。
黒9までお互いに無難な進行です。
黒が悪いわけではありませんが、チャンスを逃したといったところでしょうか。
このように石の強弱が分かれば、あとは格言に従って動くだけです。
まずは着手を考えるのではなくて、着手を決めるための状況判断をする癖をつけるだけで、大きな棋力アップが望めますので実践してみてください。
永代囲碁塾では「技術面」だけではなく、このような「基礎的な考え方」を中心に指導しています。
基礎がしっかりとしていないと、技術面の勉強をしても効果が発揮しにくいでしょう。
まずは永代囲碁塾で基礎から学ぶことをお勧めします。
この記事では「利かし」と「持ち込み」について講座を行いました。
今回はもっと分かりやすい図が実際のレッスンで出てきたので、紹介したいと思います。
テーマ図
黒番です。
上辺白の陣地が舞台です。
持ち込み
黒1、3と侵入したとします。
黒1と白2は、黒1が白2に対して下(辺)から動いています。
この黒1を取られてしまうと「持ち込み」です。
黒3も同様となります。
損得なし
続いて黒5から白14まで、黒は動いて取られてしまいました。
しかし、黒5から黒13までの動きに関しては持ち込みではありません。
黒も白も、白の陣地内で動いています。
白の陣地内であれば、お互いに損得なしとなります。
結果的に言うと、黒1と3は持ち込みなので、黒は「二手分の持ち込み」ということになります。
この「何手分の持ち込みか」というのは損失の大事な判断基準になりますので、しっかりと把握したいところです。
利かし
黒1と白2の交換は黒1が上(中央)からなので「利かし」です。
打ち込みが成功しないと分かった今では、黒1と白2の交換を目指すべきところです。
できれば、続いて黒Aも利かしたいところですが、黒Aに対して白は受けてくれないでしょう。
上辺が白地という仮定でまとめます。
上からの交換は「利かし」。
下から打って取られたら「持ち込み」。
これに尽きます。
下から打って生きることができたら大戦果ですが、そううまくいかないことも多いです。
そういうときは、さっと上から利かしてしまいましょう。
ただ、打ち込みが残っている場合に、上からさっと利かしてしまうと「味消し」となって損します。
このことから「相手の陣地が確定地かどうか」も大事な判断基準になります。
確定地かどうかの判断基準も、またのちほど説明したいと思います。
個人レッスンから出題します。
前回からテーマとして「相手の無理手を咎める」ことに取り組んでいます。
特に相手がうわ手だったりすると「これって無理手だよなぁ」と分かっていても怖くなって引いてしまうことはありませんか?
今回はその無理手を咎める実戦例を紹介します。
『問題(黒番)』白の無理な封鎖
白32は無理気味な打ち込みです。
黒は33、35と厳しい対応です。
これは素晴らしいですね。
そして、白36を迎えました。
白は無理手に無理手を重ねてきています(笑)
普段のインストラクターなら絶対に打たない流れです。
ただ、実際の対局でこのようなことは日常茶飯事ではないでしょうか。
ここは厳しくやっつけなければいけません。
それが相手のためでもあるのです(笑)
『正解』真正面からの応戦
黒1、3の出切りが最強の応手です。
ただ、最強の応手ほど失敗したときの反動は大きいもの。
自信がなければ、なかなか決断しにくい手でしょう。
白の要石が取れる(ゲタ編)
黒5からアタリの連続で白には変化の余地がありません。
そして、黒9のゲタでフィニッシュ!
この白は要石なので、黒の成功は間違いありません。
ただ、ゲタだと白のダメが二つ空いていることが気になります。
白に余裕があると利きが増えて、一歩間違えると下辺の白が復活したりするかもしれません(笑)
この場合はもっと良い手があります。
白の要石が取れる(シチョウ編)
黒5までは同じなのですが、今回の場合は黒7からシチョウで追いかけるのが良いでしょう。
黒15まで追いかける方向に注意が必要ですが、ここまではアタリの連続で一本道です。
白に選択の余地を与えないままに、要石を取ることができました。
白のダメに余裕がないので、下辺白への影響も限定的になるかと思います。
少し手順が長くて心配ですが、こちらが最善です。
この作戦を使う分岐点としては黒3になります。
アタリの一本道を読み切れるかどうかは、読みの力が試されますね。
このあたりを切り抜けると有段者への道が開けてきます。
『実戦』少し甘い
実戦は黒1の切りでした。
これは白2のピンツギが形。
白はツブレを回避することができました。
さて、続いて下辺の黒はどうなるでしょうか?
黒良しではあるものの
黒3から脱出して、黒7まで白1子を取り込みました。
これは明らかな黒の成功です。
ただし、白の無理手を完璧にツブしたとまでは言えないかもしれません。
相手のためにも、無理手は咎めてあげましょう〜!
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『正解』一石三鳥を目指す
白24までが問題図でした。
そして、正解は黒25の二間ビラキのようなツメ。正確には囲碁用語を使うときに意味がダブったときには接近戦を優先して使う傾向があります。
ですので「正解の黒25はツメ」とします。
なぜここが正解か。
先程、意味がダブったところとありました。ここにかなりのヒントがあります。
まずはツメの意味から。言葉のとおりで詰め寄る意味合いが強いので、相手に迫る目的です。次に白が手を抜くと黒Aの打ち込みを狙っています。なかなか良い狙いですね。
変化図1
もし、黒25に対して白26などと受けてきたら黒27の三々がピッタリです。白がわざわざ守った場所を荒らしにいくという、何とも性格の悪い手です。これには白もシビれます。
白26の受け方が難しいのも、黒25の魅力の一つです。
渋い二間ビラキ
黒25に当てはまるもう一つの囲碁用語は「二間ビラキ」です。
黒の確定地を増やしながら、白に二間ビラキをされるのを防いでいます。この出入りを考えると、少ないながらも確実にバカにはできない実利を稼いでいます。
地味ながらも好手のことを「渋い」と表現します。褒め言葉です。
同じ二間ビラキでも悪手だと「甘い」など表現されます。
今回は「渋い二間ビラキ」ですね。
三つの意味
そして、その他には右辺の黒模様を拡大するという魅力たっぷりの意味もあります。
まとめ
①ツメで次に打ち込みを狙う。受けてくれるなら、黒のほうがお得な場所という保険付き
②二間ビラキで少ないながらも確実に確定地を増やす。相手の二間ビラキを防ぐ
③右辺の黒模様を拡大する
個人的にはこの③がいちばん大好きなのですが、実際には簡単に確定地にはさせてはくれないので難しいところでしょう。
でも、これで一石三鳥の完成です。
失敗や変化図はまた次回に。
毎週金曜の13時から行われている金曜教室は講義のあとに指導碁をしています。
来週は年末でお休みなので、本日が年内の最終日でした。
折角なので講義したものをご紹介しましょう。
黒番でどこに打つ?
「一石三鳥を目指して」
黒番です。
右辺の黒模様が雄大です。
上辺の空き具合も気になります。
下辺白の薄さも気になります。
一石◯鳥
強い人は、一手に二つも三つも意味を込めます。一石二鳥、一石三鳥を狙うのです。
初段を目指すなら「一石一鳥」をしっかりとやりましょう。
高段者を目指すなら「一石二鳥」を常に考えましょう。
県代表を目指すなら「一石三鳥」以上です。