男子団体戦を振り返っていきたいと思います。
一力遼棋聖をキャプテンとして、芝野虎丸名人、関航太郎天元、井山裕太王座、佐田篤史八段というメンバーです。
5人ちょうどのエントリーで補欠がいなかったことが苦戦の原因の一つだったでしょう。
JOCの判断だということで、囲碁界側ではどうにもならずに悔しいところではありました。
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予選は苦戦ながらも4位通過
男子団体は予選で韓国に敗れて3勝1敗で迎えた第五戦。
相手は台湾(中華台北)でした。
下馬評的には中国と韓国には少し厳しいものの、台湾には勝利するだろうというのが大きな見立てでした。
しかし、フタをあけてみると…。
関航太郎天元が、個人戦で金メダルを獲得した許皓鋐九段に敗れたのを皮切りに…。
他の日本選手も続々と負けてまさかの1-4で敗北。
3勝2敗となってしまいました。
さらには最終戦は手空きということで、他チームとの同星になったさいのポイント計算も微妙なことに。
予選敗退もかなりありえる状態でしたが、ポイントを計算すると同率の中で一勝分だけのポイントで上回り予選通過。
本当にぎりぎりの予選通過でした。
井山さんが台湾戦で唯一挙げた一勝がものを言ったようです。
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準決勝の相手は韓国!予選のリベンジなるか
韓国には予選で0-5で完封負けしています。
準決勝はどうだったでしょうか。
結果は…。
またもや0-5で完封負け。
厳しい…。3位決定戦に回ることになりました。
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3位決定戦は台湾!リベンジ達成!
泣いても笑っても最終戦となる3位決定戦は台湾と。
予選で1-4で負けているのでリベンジをしたいところです。
結果は…。
今度は逆に4-1で勝利しました!
これで3位となり銅メダルを獲得しました!
女子団体に続いての銅メダル、おめでとうございました!
全体的に調子の悪そうだった芝野虎丸名人も最終局は快勝しました。
その1局を『IGO-CNP囲碁チャンネル(YouTube)』で解説しています。
芝野名人の華麗な打ち回しをごらんください。
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アジア大会の囲碁種目は全日程を終了しました。
今回は女子団体を振り返ってみたいと思います。
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日本の女子団体は日中韓の三つ巴で金メダル争いを期待されています。
注目の予選は韓国と中国に敗れたものの、3勝2敗で3位通過。
決勝トーナメントの準決勝進出を決めました。
韓国と中国には負けたものの、それぞれが1ー2ということできちんと戦えている状況でした。
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準決勝では中国に1ー2で敗れました。
主将戦の藤沢里菜さんのところは勝つチャンスもあったようで、惜しい敗戦となってしまいました。
とはいえ、上野愛咲美さんが勝利を挙げるなど日本もかなり戦えていることが分かります。
ここではyoutubeで「上野愛咲美五段 VS 呉依銘五段 」の解説をしたのでアップしておきます。
準決勝に敗れた日本は3位決定戦で中国香港と銅メダルを争いました。
ここは中国香港に貫禄を見せて3-0で勝利。
見事に銅メダル獲得となりました!
おめでとうございます!
注目のアジア大会ですが、囲碁の個人戦は男子のみです。
日本代表は一力遼棋聖と芝野虎丸名人の二人です。
優勝候補の日中韓は二人ずつの代表選抜ですね。
しかし、ここに思わぬダークホースが現れます。
結果を先に書いてしまいますが、台湾代表の許皓鋐九段が優勝してしまいました‥。
しかも、決して運が良かったというレベルの相手ではなく‥。
予選では芝野さん。
準々決勝では韓国の朴廷桓(世界ランク2位)。
準決勝では韓国のシンジンソ(ぶっちぎりの世界ランク1位)。
決勝では中国のカケツ(世界ランク3位)。
これら全員に半目勝ちで三連勝しての金メダルです。
文句なしの優勝ですね。
しかし、半目の三連勝ってすごいな‥。
台湾囲碁界は大盛り上がりになっていることでしょう。
でも、実は許皓鋐件は台湾囲碁界ではぶっちぎりの強さのようでタイトル八冠だそうです。
日本でいう無敵を誇ってたころの井山さん状態ですね。
運だけでなく実力も持っていることも判明しました。
日本の最高成績は一力さんの4位でした。
予選は中韓に負け。
準々決勝では中国に勝ち。
準決勝では中国のカケツに負け。
三位決定戦では韓国のシンジンソに負け。
芝野さんは予選で3敗して、同星になりつつもポイント差でぎりぎりの決勝トーナメント進出。
準々決勝で中国のカケツに負け。
ベスト8で終わりました。
芝野さんは調子悪そうな感じですね‥。
個人戦は惜しくもメダル獲得ならず。
団体戦に期待しましょう!
特に女子は日中韓と実力伯仲の感じがしますよ!
1998年生まれ、埼玉県出身
2010年入段(女流棋士最年少)、東京本院所属
藤沢秀行名誉棋聖門下、父は藤澤一就八段
棋風はしっかりと落ち着いているが、やるときはやるというイメージがあります。
三大リーグまであと一歩のところまでいき、三大リーグ入りに最も近づいた女流棋士となります。(ここでも立ちはだかったのは一力さん。上野さんの竜星戦の快挙も連続して防ぐ)
第一印象は棋風と同じようにしっかり者でした。
しかし、どうも話を聞いていくと天然というか、抜けているところがあるというイメージです(笑)
日本棋院の「スリッパを履いたまま家へ帰ろうとして外に出た」というのは有名なエピソードです。
藤沢さんご本人いわく、これには背びれ、尾ひれがくっついた噂だという主張をしておりますが…。
実際のところはどうなのでしょうか。
小さいときからゲームが好きだったが、修業時代に母親から捨てられてしまったとのこと。
なので、入段した日にそのままゲームを買いにいったというエピソードも(笑)
好きなアニメは名探偵コナンというのは公言してますね。
好きな芸能人は有村架純さんとも。
NHK杯に出場されたときに、対局日とは別で対局の感想を取材したことがあります。
本当に丁寧に対応していただいて、とても真面目な人なんだなぁという印象です。
(さすがに囲碁棋士は真面目な人が多い)
女流最年少で入段してからは、当時の時の人であった謝依旻さんから数々のタイトルを奪取。
追いつき追い越せの様相で、一気に駆け抜けました。
今では女流囲碁界の第一人者として、後ろから上野愛咲美女流名人や仲邑菫女流棋聖に追いかけられています。
勝負の世界では誰でもこんな感じではありますが、今後の戦いが楽しみですね。
現在は韓国リーグなどにも積極的に参加して、世界で活躍しています。
アジア大会でも頑張ってほしいですね!
2001年生まれ、東京都出身。
2017年入段、日本棋院東京本院。藤澤一就八段門下。
囲碁AIが台頭してきてからというもの、AIでの研究に余念がありません。
AIソフトによる打ち筋や評価値の予想がうまいことから、仲間内で「AIソムリエ」と呼ばれていたりもしました。
院生時には第30回ワールドユース囲碁選手権(12歳未満の部)で日本に初優勝をもたらしました。
二段のときにはNHKで初出場、初勝利。
2020年 新人王。
2021年 一力遼天元(当時)から天元を奪取。
2022年 伊田篤史九段を破り天元防衛。
2023年 NHK杯初優勝。
私が神奈川で子ども教室をしているときに、夏休み特別教室に関少年が参加したことがあります。(上野愛咲美さんも一緒に)
まだアマチュアで三段くらいのときで、私は六子くらい置かせて指導しました(笑)
その後は院生となり、会うたびに挨拶程度のお付き合いです。
院生手合いのお昼休みに日本棋院の坂のところですれ違いました。
関少年は下から坂を上がってきたのですが、手に持ってたコンビニ弁当を嬉しそうにフリフリしながら歩いている姿はとってもかわいかったです(笑)
大人になってからは少しオシャレな関さんです。(関係ない)
そんな関さんはAIに詳しいということで、世界相手にも引けを取らずにアジア大会では活躍してくれそうな気がしています。
NHK杯で優勝ということで早碁も強そうですし。
日本代表のキーマンになるのではないかな!
選手紹介① 一力遼棋聖
選手紹介② 井山裕太王座
選手紹介③ 芝野虎丸名人
2001年生まれ、東京都出身。
2016年入段、日本棋院東京本院所属。
藤沢一就八段門下、妹に上野梨紗二段。
天真爛漫な性格で囲碁ファンに絶大な人気を誇ります。
「ハンマーパンチ」の愛称で知られ、NHK囲碁フォーカスの講座では「ハンマー」を持って登場しました。記憶に残っている方も多いことでしょう。
上野愛咲美女流名人は女流棋戦での活躍は当然のことながら、一般棋戦のほうでも大活躍しています。
現在は女性初の新人王に向けて、決勝三番勝負を1-0でリードしています。
2022年の若鯉戦は若手一般棋戦でありながらも優勝していますね。
そして、何と言っても!
2019年のあれですよ、竜星戦の決勝です。
上野さんの勝勢で迎えた終盤。
一力さんの大石をしとめにいって、「逆に良くなりすぎると困るんですよね」というほどの状況まで追い詰めていましたが、ここからまさかの大どんでん返し。
「カケ眼生き」と呼ばれる、カケ眼二つで生きられる珍しい形ができて逆転されてしまいました。
まぁ、とはいえ一般棋戦の準優勝はすごすぎますけどね。
ちょうど電車に乗っていたときに速報が流れているほどでした。
そして、個人的に魅力を感じる部分としてはインタビューの部分ですね。
囲碁界でよくある「運良く勝ちました」「勝ててほっとしています」などの定型文は使わずに、自分の言葉で想いを伝えるところですね。
特に対局中の自分の精神状態やお腹の空き具合など、きちんと話してくれるのが面白いです(笑)
さらに個人的な思い出としては、上野さんがNHK囲碁フォーカスに講師として出演しているときに、私は囲碁講座テキストで編集担当をしておりました。
テーマは上野さんの実戦譜からハンマーパンチを鑑賞するような感じで、下島陽平八段と一緒にハンマーを持ってほのぼのとした雰囲気で収録していましたね。(ハンマーもってほのぼの?)
テーマ図作りも関係者全員で毎月集まり、会議をしました。
(無意識によく打っているケイマガケが好きな手だったんだと、本人が気付いたりといろいろありました)
とても熱心に取り組んでくれて、真面目なんだなぁという印象です。
そして、対局前のゲン担ぎでは777回の縄跳びをするそうです。
なんともエネルギッシュ!!
アジア大会にもマイ縄跳びを持っていくことでしょう。
世界戦にも強いイメージがあるので、世界相手にハンマーを振り回して頑張ってほしいです!
選手紹介① 一力遼棋聖
選手紹介② 井山裕太王座
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・神奈川県出身
・師匠は洪清泉四段
・2014年入段
・日本棋院東京本院所属
・史上初の10代名人(19歳11か月)
・史上最年少二冠(20歳0か月)
・兄に芝野龍之介二段
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3人目は芝野虎丸名人です!
数々の強烈な記録を樹立してきた芝野さん。
しかし、当の本人は物静かな好青年です。
着手の手付きやアゲハマを碁笥に入れるときは静かに入れる。
周りに迷惑がかからないようにと始めたそうです。
気遣いやさんの一面が垣間見えますね~。
そして、棋風のほうは冷静な打ち手ですが、相手の仕掛けには受けて立つことが多いですね。
本人は詰碁が苦手と言いますが、よく相手の大石もしとめているので言葉半分に受け止めておきましょうか(笑)
タイトルを取ったあとも簡単なミスが続いたときには、基本に立ち返って「やさしめの詰碁をたくさん解く」というアマチュアにお勧めできるような勉強方法を実践していたこともあります。
兄の芝野龍之介二段とはとても仲が良く、一緒にイベントなども開催しています。
youtubeチャンネルも兄弟で開設していましたね。
さて、ここからは思い出話を。
芝野さんが小学生の頃です。
少年少女囲碁大会全国大会に神奈川県代表で出場していた芝野少年。
私の実家の保育園出身である生徒Mくんも全国大会に出て、芝野さんと対局しました。
そのときはまさかのMくんが勝利。
芝野少年はそこで人目はばからずに大号泣してました。
それを見て負けず嫌いなんだなぁと思いました。
ちょうどその直前に親御さんが囲碁サイトで道場を探すコメントを残していました。
私がそれにリアルタイムでは気付かずに、遅れて自分の子ども教室に誘ったときには時すでに遅し。
「洪道場に行くことが決まったあとでした」とその大会会場で親御さんに聞きました。
当時は惜しいことをしたと悔やみましたが、今の活躍を見ていると洪道場で良かったなと思いますね(笑)
その後、院生時代は師匠の洪清泉四段が心配をするほどにネット碁を打ちまくっていたことがあります。
やっぱり負けず嫌いなんですね。
囲碁棋士になったあとでも「囲碁は仕事としてやっている側面もある」とドライに取材に答えてくれたこともあります。
「いつ辞めても良いと思った時期もありました。さすがにタイトルを取ってからはそんなことはできなさそうですが。」
永代「辞めてもいいと思っていたのに、それでも続けてきたのはなぜですか?」
芝野さん「やっぱり負けず嫌いだったのかも…」
出ました!負けず嫌い!
負けず嫌いという面で名人まで取るとは!
(もちろんそれだけではないことは分かっています)
いつまでも笑顔がかわいい芝野さん。
その笑顔とは裏腹に囲碁は豪腕を見せることもしばしば。
アジア大会でも強豪を相手にバチバチやってもらいましょう!
前回の記事でアジア競技大会2022の日本代表選手の紹介をする経緯を書いてます。
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トップバッターは、我が日本代表の団長を務める一力遼棋聖、本因坊です。
【プロフィール】
宮城県出身、宋光複九段門下、2010年入段、日本棋院東京本院所属
囲碁棋士でトップを張る傍ら、早稲田大学へ進学のあとに河北新報へ就職するという異例の経歴をお持ちです。
現在は囲碁棋士の対局が中心ではありますが、定期的に河北新報にて記事も書いているようです。
身内が河北新報の経営者なので、将来は跡を継ぐのではないかという噂もちらほら。
その時は囲碁棋士はどうなるんでしょう?
実現の時期も踏まえて、色々と気になるところです。(本人に聞きたいけど、聞きづらい案件です)
一力さんは子どもの頃から四則演算はとてつもないスピードでできるらしく、確率などは瞬時に計算できるらしいです。(さすが囲碁棋士、ヨセで確率計算は必要なので)
趣味はテレビ視聴で、クイズ番組などがお好きなようです。
食べ物は大のラーメン好き。
さらには対局日の勝負メシとして朝から焼き肉を食べるというエピソードも持ってます。
エネルギッシュ!!
同門の平田智也八段からよく話を聞きますが、「彼は自分の石は絶対に死なないと思ってる」と言ってました。
シノギなどを中心に読みに自信があるということですね。
なので、序盤からさっそうと陣地を稼いでいきます(笑)
個人的には上野愛咲美女流名人との竜星戦の決勝戦で、かなりの劣勢の碁を「カケ眼生き」で逆転したのは歴史に残る一局だと思ってます。
さらに平田八段は「昔は泣き虫で、負けてよく泣いてた」とも。
一力さんの泣きと言えば、一時期井山さんに連戦連敗したときに苦しい時期があったようです。
たしかにタイトル挑戦するたびに弾き返されていたころですね‥。
さらには若かりし頃の一力少年は、普段から勉強していた洪道場にて洪先生に「なぜ日本は世界で勝てないのですか」と涙ながらに話してきたというエピソードもあります。
そして洪先生は「遼は食事などにみんなで行くことはあっても、その後に遊びにいくことはほとんどない」とも付け加えてくれました。
トップ棋士に大学にとあれば、時間をどう使うかというのは、とても大事になってきますよね。
大変だ‥。
こういう色んなエピソードを聞くと、本当に応援したくなる棋士ですよね。
一力ファンが多いのも納得です。
今回のアジア大会では、ぜひとも世界の強豪を倒してほしいものですね。
ふだんは真面目で礼儀正しい印象で、日本棋院でお会いした時などは、にこやかに挨拶をしてくれます。
個人的には、近い将来に日本棋院の理事長になってほしい棋士No.1です!
河北新報の社長兼、日本棋院の理事長が実現すると面白いと思います!
もうすぐアジア競技大会2022が開催されます。
競技としてはスポーツがたくさんあるので、アジア版オリンピックかなというイメージがあったのですが、実は囲碁も競技としてあるのです。
2010年以来の二回目の競技採用だとか。
さすがは囲碁人口の多い中国!(笑)
そのアジア大会の日本代表は団長の一力遼棋聖を始めとして、井山裕太王座、芝野虎丸名人、関航太郎天元、佐田篤史七段、藤沢里菜女流本因坊、上野愛咲美女流名人、上野梨沙二段とそうそうたるメンバーです。
韓国や中国が強いとはいえ、このメンバーなら‥と期待に胸がふくらみます。
最低でも銅メダルは、ほしいところですね。
そして、この大会を盛り上げるべく、X(旧Twitter)にて選手紹介をしようという方がいます。
この大会のために自腹で広告費を負担するのだとか。
本当に素晴らしい企画だと思います。
私は2020年の4月号〜6月号で、観る碁向けの企画を付録で担当しており、そこで棋士紹介などもやったことがあります。
そういう経験もあるので、お手伝いの募集に立候補してみます!
ということで、次回からはアジア大会の日本代表選手の紹介をしていこうと思います。