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ゆったりと品のある空間で囲碁を楽しむ・・・
2016年3月14日

アルファ碁の第四戦

By igosalon

イセドル九段が1勝をあげました!

正直なところ、第1戦が終わったときは5連敗すると思っていました。

なので、3戦目(3敗目)のときはブログとしてはスルーしました。

スルーしたくてしているわけではありませんが、この気持ちを文章で表現するのは難しいと思いました・・・・。

 

まず、今回はイセドル九段にありがとう!と言いたいです。

これは人類を代表したイセドル九段ではなくて、イセドル九段個人に素晴らしい内容の上に、結果までつけたことについてです。

これは人類の夢ではなくて、一棋士としての盤上での表現にとても感銘を受けました。

 

何の事かは棋譜を見た方なら言わなくてもと言ったところですが、この・・・。

1図

arufa1

ワリ込みですよね!

これは歴史に残る一着だと思います。

幽玄の間の解説をしていた三村智保プロはもう1図(白1の前)の状況では白が厳しいです。

と敗色濃厚と取れるコメントを出していた直後のことだったのです。

起死回生の一着ということがまずはこのワリ込みの魅力をアップさせています。

2図

arufa5

実戦は続いて2図のようになり、白6がAとBを見合いにした絶妙手。

この絶妙手をワリ込みの段階から見ているということも魅力アップの要因です。

ここで黒地が破れては勝負が決まりました。

 

昨日は永代塾囲碁サロンで万波奈穂プロが指導碁会をしてくれていました。

そこで、指導碁会が終了したころには勝利が決まっていて、この歴史に残る一手がツイッターなどを中心に騒がれまくっていました。

万波プロ「永代くん、これは黒2と打ったらどうなるの?」

万波プロは修行中のときのような感覚で突然、こう言いました。

3図

arufa7

永代(ええ~、碁の内容を聞かれても・・・。自分はもう引退してるのに・・・)

イセドル九段がこの鬼手で勝ちをもぎとったとどこにでも書いてあるので、どう対応しても黒が困るという勝手な思い込みがありました。

ここで

永代「これで黒がツブレじゃないのかな?」

4図

arufa3

白3から5が綺麗な手筋で白11までとなると綺麗に黒がツブレです。

腕に覚えがある人(院生クラス又はそれ以上で棋士も含)はこの図がぱっと浮かんでしまい、素晴らしい決め手を用意した白1だったと即断してしまいます。

しかし・・・。

5図

arufa8

万波プロ「白7のアタリには利かないよ。黒8と打ったら?」

とさらっと言ってきました。

自分は万波プロは天才だと思いました。

最近はよく書いてますが、言われてみれば簡単だけど、自分で思いつくのは一生懸かってもできないという部類の手です。

こういう手をぱっと思いつくのがプロなのです。

その後も自分はあーだこーだと4回くらい案を出しましたが、全て万波プロにシャットアウトされました・・・・。

万波プロが疑問(正解が現時点では分かっていない)に思うような事を自分が分かるはずがないということに、質問された時点で気付くべきでした・・・。

 

最後のほうは皆で、手はないんだけど、コウの変化図狙い(黒が駄目だがコウにする)で、コウの弱いアルファ碁の弱点を狙った奇襲作戦だ!などと言い出すしまつです・・・。(イセドル九段の手はうそ手だと言っているようなもの・・・・)

アルファ碁がその後の対応を誤ったのは、ワリ込みは駄目な手だけど、珍しい手を打てばアルファ碁が間違うのではないかというイセドル九段の盤外作戦が功を奏したのではないかと。

(棋士は基本的に相手の間違いを期待するような手は邪道と感じています。もちろん、微妙なラインのときはどんどんとやりますが。)

 

ここで自力で問題解決をするのを諦め、ツイッターを確認します。

ワリ込みを歴史に残る一手のようにはやし立てている一方、なぜ鬼手なのかということを書いている人は誰一人いません。

なので、自分でつぶやいてみました。

永代「黒2と打たれたらその後が読めません。誰か教えてくださいと」

そうするとプロもインストラクターも口を揃えてまずは2図のツブれコースを提示してくるのです。

ここで自信満々に万波プロの返し技を自分が思いついたかのように返します(笑)

皆、これで撃沈してしまいます。

ある程度の腕になると、この筋がぱっと見えてしまい、イセドル九段が打ったこともプラスされて、そこで読みをやめてしまうのです。

またさらにここでワリ込みの魅力が大きくアップするのです。

5図のこの後の変化は分かりません。

でも、もしからしたら白のツブレという可能性もあります。(後日の研究結果待ち)

そして、某棋士の情報で・・・・。

6図

arufa9

白の大部分は捨てて、上辺を少しだけツキ破る。

そして、白15に回るという意見がきました。

これで白が優勢と言わんばかりに・・・・。

自分は棋力がないので、この情報を信頼します!

ここを解説するのは難しいですが、とても素晴らしい流れです。

「手をつける=真ん中の白を生き、又はコウ」

というのが普通の発想です。

しかし、6図は先手で10目くらい荒らせば白15で勝てるでしょという、形勢判断に基づいた作戦なのです。

柔軟な発想ですね。

なぜ白1を打たないといけなかったのかは疑問に思いますが、それはこれから情報が出てくるにつれて明らかになるでしょう。

とにかく、盤上では出てきていない変化に対してもプロが苦戦するような読みで勝負し続けているということです。

 

まとめに、私は今回の企画では内容は特に気にしていませんでした。

簡単に言えば結果重視です。

でも、この一局ばかりは内容に触れられずにはいられません。

自分が重視したいのは、勝ったということは二番目に大事なことで、この妙手で決めたというのが一番大事だと思っています。

劣勢に立たされたイセドル九段。

優勢になったら、もう絶対に負けないと言われていたコンピューター。

その常識を覆した瞬間なのです。

①人間にこんな短期間で勝てるようになるわけがない

②コンピューターが逆転されるわけがない

この二つが一気に覆されたシリーズです。

結果以上に重要視しなくてはいけないことではないでしょうか。

コンピューターは結果では勝った。

でも、内容では人間が勝る部分も残っている。

常識が通用しない世界というのは本当にワクワクしますね。

この攻防は世界トップクラスでしかできないと考えます。

ラスト一局もまた常識が覆されるような一局になるのか。

とても楽しみです。

 

今回は盤上の事を書きましたが、またすぐに盤外での事をまとめたいと思っています。

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